リフォームと代物弁済
【登場人物】
A(夫)
B(妻)
【事例】
B名義の建物に、Aが費用を全額出してリフォームするケース
リフォームローンと贈与税
Aがリフォームローンを利用する場合、金融機関は自己所有の建物についてのリフォームでなければ住宅ローンとして融資をしてくれない可能性が高いです。
また、住宅借入金特別控除(住宅ローン控除)を利用するには「融資を受ける者が所有(単有or共有)し、かつ、居住している」必要がありますので、Aは建物の所有権(一部or全部)を有していなければいけません。
B所有建物にAの費用で増改築しても、不動産の付合(民242条)により全てBのものになってしまいます。
その場合、AはBに対し償金請求権(民248条)を有することになりますが、当該請求権を家族間で行使することは通常ないと思われるので、増改築費用はAからBへの贈与として扱われ、Bに贈与税がかかる可能性が出てきます(但し、配偶者贈与が適用されれば贈与税かかりません。)。
以上のことから、Aは建物の所有権をあらかじめ贈与(贈与税の基礎控除・配偶者贈与・相続時精算課税制度を検討し、贈与税がかからない範囲で贈与)や売買等で取得しておく必要があります(リフォームローンを受けるために)。
但し、やはり、たとえAが所有権(持分)を持っていたとしても、増改築費用をAが全てねん出し、建物価値が増えた場合、その部分にBに対し贈与税がかかってきます。
Bは建物の所有権を持っている以上、当該建物の増改築をするにあたって費用を出すべきところ、全てAに出してもらうので、AからBへの贈与とみなされてしまうということです。
代物弁済よる所有権移転登記
そこで、贈与税を回避するために「代物弁済による所有権移転登記」を検討することが一つの対応策になります。
対価を支払うことにより、贈与ではない状況を作り出すということです。(代物弁済についてはこちらをご覧ください。)
理屈としては、増改築によりAがBに対して取得した償金請求権を行使し、Aは所有権持分を代物弁済としてAに支払うということ、又は、例えば1000万円かけて増改築をして、建物価値が単純にプラス1000万円になり、その増加した分の対価をBは所有権持分でAに弁済(代物弁済)するということです。
なお、この場合、Aに譲渡所得税がかかる可能性があるので注意が必要です。(不動産取得税は原則としてかかります。)
登記の流れ
① 住宅借入金等特別控除の適用を受けるためにAの単有又は共有状態を作る
→BからAへ所有権(一部または全部)移転登記
② リフォームローンの抵当権設定登記
③ 増改築による床面積等の表題部変更登記
④ 共有の場合に持分割合を越えて増改築した部分の贈与税の回避
→代物弁済による所有権(一部または全部)移転登記
もし①の段階で単有にできたら④は必要ありませんが、贈与によってBからAへ所有権移転させた場合は贈与税に注意が必要です。
なお、④を「真正な登記名義の回復による所有権移転」で行う方法も考えられますが、代物弁済を原因として処理をする方が個人的には無難だと思います。
【参照】(国税庁HPより)
親名義の建物に子供が増築した場合、増築部分は建物の所有者(親)の所有物となります。この場合、親が子供に対して対価を支払わないときには、親は子供から増築資金相当額の利益を受けたものとして贈与税が課税されることになります。 しかし、子供が支払った増築資金に相当する建物の持分を親から子供へ移転させて共有とすれば、贈与税は課税されません。
なお、この場合、親から子供への建物の持分の移転は、親から子供に対する譲渡となり、譲渡利益が生じるときは譲渡所得の課税対象になりますが、共有とするための譲渡及び親子間の譲渡であることから、居住用財産を譲渡した場合の特例は適用できません。