遺産分割と第三者との関係
遺産分割協議によって、相続財産である不動産を単独で相続した者や、法定相続分を超える相続分を取得した者は、その旨の登記(相続登記)をしなければ第三者にその相続した権利を対抗(主張)することはできないとされています。
例えば、4人家族で考えてみます。
父が死亡して、母と子供二人が相続人だとします。
母と子供2人で遺産分割協議を行い、母が不動産を単独で相続することになった場合、その旨の登記をしなければ母は不動産の権利を第三者に主張することはできません。
これが何を意味するのかと言いますと、遺産分割協議によって母が不動産を取得することになっても、その登記をしない間に子供が勝手に相続登記を入れて(何も知らない)第三者に不動産を売却してしまったとします。
この場合に、母は「私が遺産分割協議で不動産を取得したので返してください。」とは主張できません。(訴訟で争った結果、取り返すことできる可能性はありますが。)
何も知らない第三者が不動産を取得することになってしまいます。
改正相続法では、相続による権利の承継についても同じような規定を設けており、相続による権利の承継が遺産分割なのか遺言なのか等にかかわらず、法定相続分を超える部分については、登記等を備えなければ第三者に対抗できないとしています(民法899条の2)。
なお、上記「相続分を超える部分」についてですが、これは学問的に難しい部分ではありますが、法定相続分を超える部分についてのみ対抗要件(登記)を備えれば、その権利の全体について第三者に対抗(主張)できるというものではないとされています。
つまり、法定相続分が3分の1である者が土地の全部を相続する場合、法定相続分を除く3分の2の持分について登記をすれば土地全体の所有権を対抗できるわけではなく、あくまでも取得した権利全体について登記を備える必要があるということです。(参考:「一問一答 新しい相続法」162頁)
少し難しい話になりましたが、相続登記を放置していたために、所有者不明の土地問題や、相続人が何十人何百人にもなって遺産分割協議が成立できないような問題が増えてきています。
相続登記を放置することはデメリットはあれどメリットはほぼありませんから、相続登記はできるだけ早めに司法書士に相談するといいでしょう。