任意後見制度は取締役の欠格事由に該当しますか?

該当しません。
取締役の欠格事由に任意後見契約の効力が発生したことは挙げられていません。
(詳しくは「取締役になれる人の条件はありますか?」をご覧ください。)

 

取締役Aさんが任意後見契約を締結している場合に、Aさんの判断能力が衰えてきたために任意後見契約の効力を発動(任意後見監督人の選任)させ、Aさんに任意後見人が付いたとしても、Aさんは取締役としての地位を失うことはありません。

しかし、理論上はそうだとしても、実務の現場では問題が生じる可能性が大いに考えられます。

上記Aさんの判断能力がどの程度低下しているかによって、Aさんは取締役としての職務(意思表示や判断)をまともにできないにもかかわらず、取締役としての地位を有するという事態が生じ得ます。
このように取締役として任務を遂行することができないにもかかわらず、取締役としての地位を有しているという事態は会社運営の停滞を招きます。

それを回避するためにも、任意後見監督人が選任された場合に取締役として退任する旨の定款の定めを設けておく等、なんらかの対策は必要になるのではないかと思います。

 

また、中小企業の場合には、取締役と株主を兼ねているケースがほとんどです。
その場合に、株主としての議決権行使をどうするのかという問題も生じます。

つまり、上記のAさんが取締役でもあり株主でもある場合に、任意後見契約が発動したらどうなるでしょうか?

成年後見人の包括的な代理権とは異なり、任意後見人はあらかじめ任意後見契約において定めた事項の代理権しか有しません。(成年後見についての詳細はこちら

任意後見人の代理権目録に「株主としての議決権の行使」と定められていない場合には、Aさんの任意後見人は議決権を行使することができず、当該議決権は凍結状態になり、適正な株主総会運営を行うことが難しくなるという可能性も考えられます。(Aさんの判断能力低下の具合にもよりますが。)

 

家族信託においても、事業承継対策として「家族信託契約」と「任意後見契約」を併用して行うスキーム()が出回っています。

ただ、この場合でも、上記の問題は残ることになりますので、契約締結時にはしっかりと将来を見据えてスキームを考える必要があります。

 

 

 

 例えば1つの例として、会社オーナーが委託者となり、役員としての地位は残したまま、株式等を次期社長予定の息子(受託者)に信託し、息子に信託した株式の議決権を自分又は指図権者の指示に従って行使するようにしておくことで、役員報酬は受取りつつ、議決権行使については指示を出す、そして財産管理等は受託者である息子に行ってもらう、というものです。
この時に、任意後見契約も締結しておくことで、自分の判断能力が低下し、任意後見契約が発動されたとしても、取締役としての地位は失わずに役員報酬等の恩恵を受けることができる、というわけです。

 

 

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