被相続人の最後の住所と登記簿上の住所が違う場合の相続登記
不動産の登記簿には所有者の「住所」と「氏名」が登記されています。
被相続人(亡くなった方)が不動産を所有している場合、当該不動産については相続人や受贈者への相続登記(又は遺贈登記)が必要になります。
さて、この相続登記でよくあるのが、被相続人の登記簿上の住所はAだけれども、死亡時の住所はBというケースです。
このように「被相続人の最後の住所」と「登記簿上の住所」が相違することがよくあります。
不動産を取得してから、引っ越しをして住所が変更になったけど住所変更登記(所有権登記名義人住所変更登記)をしていない場合や、行政区画の変更によって町名地番が変更したけども住所変更登記をしていない場合などによって、上記のように住所の相違が生じることが考えられます。
住所変更登記は義務ではないので、住所変更登記だけをやろうとする人は少ないように思います。
通常、不動産登記では、引っ越しなどにより住所が変更した場合には住所変更登記を申請する必要があります。
上述したように、住所変更登記だけをすることは義務ではないのですが、例えば、売買や贈与、財産分与等による所有権移転登記を行う際に、登記簿上の住所と現在の住所が相違する場合には、先にこの住所変更登記を申請しなければいけません。
しかし、相続登記をする際に、「被相続人の最後の住所」と「登記簿上の住所」が相違していても、相続登記の前提として住所変更登記をする必要はありません。
但し、冒頭の例で言いますと、「被相続人の最後の住所A」と「登記簿上の住所B」の変遷がわかる書類(住民票や戸籍の附票、住居表示実施証明書など)を提出する必要があります。
なお、住民票や戸籍の附票は、役所での保存期間(死亡日から約5年)を経過していると破棄されてしまうので、取得することができなくなってしまいます。
そのような場合には、不動産の権利証を添付することや、不在籍・不在住証明書などの書面を必要に応じて用意しなくてはいけません。
【2024.4追記】
登記簿上の住所と被相続人の住所が繋がらない場合の措置【令和5年12月18日法務省民二第1620号通達】
これまで、住所証明書としては以下の①~④いずれかの書面がこれに該当するとされてきました(平成29年3月23日法務省民二第175号通達)。
①登記記録上の住所が本籍欄に記載された戸籍の謄本
②本籍及び登記記録上の住所が記載された住民票の写し
③登記記録上の住所が記載された戸籍の附票の写し
④被相続人名義の所有権に関する登記済証①~③で住所が繋がらない場合に、④の提供ができない場合には、相続人全員の上申書が実務上されていた処理。
本通達により、以下のA及びBの書面を添付すれば④または相続人全員の上申書がなくても相続登記の申請をすることができるようになりました。
A.固定資産税の納税通知書又は評価証明書
B.不在籍証明書及び不在住証明書