相続人と相続人以外へ相続させる遺言と登記

遺言書は、自分の死後、財産を誰にどのような割合で相続させるかを決めることができます。
相続人へ相続させることもできますし、相続人以外の第三者へ相続(正確には遺贈)させることもできます。

遺言書の記載方法はかなり奥が深い分野で、様々な実務書が世に出ています。

財産も不動産、預貯金、株や自動車だけではなく、骨とう品や債権など様々なものがあります。

その中でも不動産については少し特殊で、遺言書の内容によって、それに関する名義変更の登記手続き(相続登記遺贈登記)もどのように進めるかが変わってきます。

【記載例】
・土地と建物を〇〇に相続させる
・土地と建物を〇〇に遺贈させる


相続人へ相続(または遺贈)させるのか、第三者へ遺贈させるのかによって、登記の取り扱いが異なってくるので、司法書士は頭を悩ませる部分になります。

また、遺贈でもそれが特定遺贈なのか包括遺贈なのかによって不動産の登記手続きが異なります。

 

相続登記と遺贈登記の優先順位

土地を息子Aに2分の1相続させ、残りの2分の1を友達Yに遺贈する。

 

上記のような遺言書があったとしましょう。

この時、土地の名義変更の登記手続きはどうなるでしょうか?
パターンとしてはいくつか考えられます。

【考えられる登記のパターン】
① AとYにまとめて相続登記をする(申請は1件)
② AとYにまとめて遺贈登記をする(申請は1件)
③ Aへの相続登記を申請した後に、Yへの遺贈登記を申請する(申請は2件)
④ Yへの遺贈登記を申請した後に、Aへの相続登記を申請する(申請は2件)

 

さて、このようにいくつか登記のパターンは考えられますが正解は1つです。
それぞれ見ていきましょう。

① AとYにまとめて相続登記をする(申請は1件)

①は、第三者への遺産承継で登記原因が「年月日相続」となることはありませんので不正解。原因が「年月日相続」になるのは相続人に対する所有権移転登記で、第三者である友達Yへの所有権移転は「年月日遺贈」となります。

② AとYにまとめて遺贈登記をする(申請は1件)

②は遺言書の内容が「・・・息子Aに2分の1相続させ・・・」となっています。
相続人(息子A)に対して相続させる旨の遺言(特定財産承継遺言)の場合、当該相続人への登記は遺贈登記ではなく相続登記になり「年月日相続」となりますので、Aに対して遺贈登記をするとしている②も不正解

③ Aへの相続登記を申請した後に、Yへの遺贈登記を申請する(申請は2件)

③は、一見できそうに見えますが、「相続」という言葉には包括的な意味合いがあり、「相続による一部移転登記」はその性質上許されないとされています(昭30.10.15民甲2216民事局長電報回答)。

③のケースでは、1件目で「息子Aへの年月日相続による所有権一部移転登記」をして、2件目で「友達Yへの年月日遺贈による持分全部移転登記」をすることになりますが、Aに対する「年月日相続」を登記原因による所有権一部移転登記は受理すべきではないとされています(登研523号123号)ので、③も不正解

 

④ Yへの遺贈登記を申請した後に、Aへの相続登記を申請する(申請は2件)

となると、④が正解です。
まずは「友達Yへの年月日遺贈による所有権一部移転登記」を1件目で申請し、2件目に「息子Aへの年月日相続による持分全部移転登記」を申請することになります。

「相続」と違って「遺贈」による一部移転登記は認められているため、まずは遺贈登記によって所有権を一部移転させて、最後に相続登記で所有権持分全部を移転させるという登記手順を踏むことになります。

 

まとめ

遺贈と相続が混同する遺言書においては、それに関する登記手続きは遺贈登記をしてから相続登記を申請する必要があります。

遺言書を作成する場合は、実際に遺言書の効力が生じた後(死亡後)のことまで考えながら内容を決めなければいけません。

遺言書は、相続手続きがスムーズに進むため、相続人間の争いやトラブルを避けるために大きな効果を発揮します。

しかし、その内容によっては、余計な手続きが必要になったり、複雑な手続きが必要になったりと、せっかく遺言書を残したのに本来の遺言書としての効果を発揮できない可能性も考えられます。

遺言書は全てオーダーメイドです。
ひな形などはなく、それぞれその人に合った遺言書を作成することが必要になります。

特に不動産を所有している方が遺言書を作成する場合には、ネットに転がっているひな形を利用するのではなく、しっかりと登記のプロでもある司法書士に相談をして作成することをおススメいたします。

 

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