受益者代理人ってなんですか?
受益者代理人とは、その代理する受益者のために、当該受益者の権利(※)に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する者です。
信託管理人や信託監督人の制度は、全ての受益者のための制度であるのに対し、受益者代理人は、その代理する受益者のための制度です。
複数の受益者に1人の受益者代理人を指定することもできますし、1人の受益者に2人以上の受益者代理人を指定することもできます。また、受益権の種類が異なる場合には、その種類ごとに受益者代理人を指定することもできます。
そして、「代理」ということからも、受益者が現存していることが必要です(これは信託監督人も同様です。)。
受益者代理人は信託行為の定めによって、委託者の意思に基づき選任される者であり、信託管理人や信託監督人のように利害関係人の申立てによって裁判所が選任することはできせん。
これは、受益者代理人が選任された場合、受益者本人は単独受益者権以外の権利を行使することができなくなってしまいます。そのような強い権限を有する受益者代理人を、委託者の意思に基づかずに裁判所が選任することは受益者にとって不意打ちになり兼ねず、妥当ではないとされているためです。
但し、受益者代理人が「交代」する場合には、委託者又は受益者代理人に代理される受益者の申立てにより、裁判所が新受益者代理人を選任することができます。
※ 受託者、法人受託者の役員の負う損失てん補責任等の免除は行使できないとされています。当該免除の可否を判断することの困難性や、受益者に与える重大性に鑑みて、受益者代理人の権限には含ませないとされています。
受益者代理人制度の目的
受益者代理人を選任する目的は、受益者保護と信託事務の円滑化です。
受益者代理人は、判断能力の低下した受益者や、幼い子を受益者としたような場合に、当該受益者の代理人として動きます。
例えば、10才の子供に毎月定額の金銭を与える定めのある信託の場合に、受益者代理人が当該子供に代わって受託者に毎月の給付請求を行うような場合です。
また、例えば、単に投資の対象として受益権を取得したような受益者(信託事務にあまり関心のない受益者)の場合、当該受益者による受託者の監督や、信託事務の積極的かつ円滑な意思決定を期待することはできず、当該受益者自身も自分が動かずにそれらを行ってくれる人(受益者代理人)を望むはずです。
さらに、受益者が変動したり、多数である場合、受益者の権利行使・意思決定がスムーズに行われず、受託者の信託事務にも支障が出ることも考えられます。そのような場合に、受益者代理人に受益者の権利行使を集中させることで、受託者の信託事務を円滑に進めさせることも目的としています。
つまり、受益者代理人は、受益者・委託者の双方にとって有益になるような制度であると位置づけられています。
受益者代理人の資格
受益者代理人の任務(事務)の終了
受益者代理人の任務(事務)は、受益者代理人の死亡、辞任、解任等によって終了するほか、次の事由によって終了します。
① 委託者及び受益者代理人に代理される受益者の合意
② 信託行為において定めた事由
◆参考条文◆
信託法138条~144条