受託者に司法書士等の専門職が就任することは可能ですか?
民事信託・家族信託において、司法書士や弁護士などの専門職が受託者として就任するには難しい現状があります。
その障壁となっているのが信託業法の存在です。
信託業法では「信託の引き受けを業として行う者は、免許を受けた信託会社でなければならない」旨の定めがあります。
ここでいう「業として」のポイントになるのは次の3点です。
①営利目的
②反復継続性
③不特定多数
通常、家族信託における受託者は家族や親族が就任することになるので、信託業法の問題は顕在化しません。
なぜなら、通常の家族間で行う家族信託は、営利を目的としているわけでもなく(受託者が信託報酬を貰うことは可能です。)、反復継続的に不特定多数を相手にするわけでもないからです。
一方、司法書士などの専門職が家族信託の受託者として就任することは、少し話が違ってきます。
司法書士や弁護士等の専門職は、法律事務を行うことで報酬を得ています。
つまり、不特定多数の者から反復継続的に営利を得ることを目的とする業務を基本とするため、信託業法に抵触する可能性が高いのです。
司法書士が無報酬で受託者になることは許されるのか?
司法書士が無報酬で、ボランティア的な立ち位置で受託者になるのはどうでしょうか?
また、委託者との個人的な付き合いがあり、受託者になることを依頼された場合などはどうでしょうか?
これらの問題については、「単発で受託者として受任した場合には、信託を営業として行っているとはいえず、信託業法には抵触しない」というような見解があるなど、少し前向きな意見も見られますが、まだ法整備が整っていないため、議論の範疇で滞っているようです。
個人的には、専門職が受託者に就任することを無制限に認めることは宜しくないとは思いますが、ある程度の条件を満たした専門職の就任を認めてもいいのではないかと思います。
そうすれば、より一層、家族信託の幅が広がるのではないでしょうか。
なお、受託者としての業務が不安な場合には、「信託事務処理代行者」として専門職を指定することで、その業務の軽減を図ることも可能です。
ちなみに、司法書士や弁護士等の専門職が受益者代理人や信託監督人として就任し、報酬を得ることは禁止されていません。