受益者として指定された者の承諾は必要?
民事信託・家族信託において、信託行為により受益者として指定された者は、当然に受益権を取得するとされています(信託法88条)。
信託行為により受益者として指定された者は、受益の意思を表示しなくても受益権を取得する、つまり、本人の意思とは無関係に当然に受益者になるということです。(※)(※2)
これは、受益者として指定された者は受益者としての利益(受益権)を享受できるので、特段その承諾を得る必要はないとされているためです。
但し、それでも「受益者になるのは嫌だ」という者のために、受益権を放棄することも認められています(信託法99条)。
なお、受益権の取得については、信託行為に別段の定めを設けることも可能とされていることから、「受益権の取得については受益者となる者の同意を必要とする」というような定めも置くことができます。
また、受益者として指定された者が、その旨(受益権を取得したこと)を知らない場合には、受託者は、遅滞なく、その者にその旨を通知しなければならないとされています。
ただ、これについても別段の定めが可能とされているので、「受託者は受益者〇〇に対し、受益者となった旨を通知しないものとする」などと定めることで、受益者に知らせることなく信託を組成することが可能になります
これは、子供の将来のために子供に財産をあげたいけど、子供にはその事実はまだ隠しておきたい、というような場合などに有効な手段となります。
※ 信託契約で信託を設定する場合、委託者と受託者の2名で契約を締結することができるので、受益者の知らないところで信託を進めることも理論上可能です。(実務では「委託者兼受益者」となるパターンが多いので、受益者になったことを知らないというケースはそこまで多くないかと思います。)
※2 当事者以外の第三者には利益も不利益も与えることはできない、という一般原則の例外とされています。(民法537条2項参照:第三者のためにする契約)
◆参考条文◆
信託法88条、99条