受託者を法人にするメリットは何ですか?

民事信託・家族信託では、受託者は個人(自然人)である必要はなく、法人(一般社団法人、株式会社等)も受託者になることができます。

通常の家族信託では、息子や娘、親族等が受託者に就任することが多いですが、中には、所有している法人、または新たに法人を信託のために設立して当該法人を受託者に就任させることもあります。

個人が受託者になる場合のデメリットは、主に次のようなものが挙げられます。

受託者自身の高齢化
受託者の死亡による相続の発生

 

信託財産に「不動産」がある場合には、形式上の所有者は受託者になりますので、受託者の判断能力が衰えてしまった場合には、当該不動産を処分(売買や贈与等)することが難しくなりますし(後見制度を利用することになります。)、受託者が死亡した場合には、不動産の相続による受託者変更登記を行う必要があります。

 

また、信託財産に「現金」がある場合には、受託者名義の「信託口口座」又は「信託専用口座」を開設することになりますが、受託者の死亡により名義変更を行う必要があります。

信託金銭管理口座が「信託専用口座」にすぎないときは、受託者の認知症や死亡によって事実上凍結される可能性がありますので、その対策も必要になりますし、受託者自身の債務について差押えリスクも生じてしまいます。

 

一方、受託者を法人にすることによって、上記のような弊害を避けることができます。法人には「認知症」や「死亡」の概念がありませんので、その部分の心配をする必要がなくなります。

もちろん、法人の構成員は人間(自然人)なので、その者については「認知症」や「死亡」の可能性はありますが、あくまでそれは法人内部の問題なので、受託者として法人が管理する不動産や信託口座について影響はありません。

信託財産に入れた不動産の名義や銀行口座の名義は「法人名義」になるので、その法人の構成員に変動があっても受託者としての法人に外形上の変化は起きないということです。

 

なお、関連記事として『一般社団法人と株式会社のどっちを受託者にすればいいの?』もご覧ください。

 

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