信託財産は遺産分割協議や遺言書の対象財産となりますか?
なりません。
家族信託において、委託者が信託財産として信託した財産は、委託者の財産ではなくなります。
信託財産は形式的には受託者名義になり、受託者が管理・処分を行いますが、実質的には信託という隔離された世界で誰のものでもない財産として扱われることになります。
つまり、信託財産は所有者(委託者)の財産ではなくなるので、委託者が死亡した場合に行う遺産分割協議の対象財産とはなりませんし(信託終了時の権利帰属先を、委託者の法定相続人の遺産分割協議によって定める方法もありますが、これには一部否定的な見解もあります。)、また、信託を設定した後に委託者が作成する遺言の対象財産からも外れます。
ただし、例えば「信託財産である金融資産から受益者に対して毎月〇〇円給付するものとする」というような信託の内容になっていた場合、生活費や遊興費として委託者兼受益者に給付された金銭は受益者の固有財産となります。
このように信託財産から給付された金銭は信託財産という枠から飛び出して受益者固有の財産となりますから、そうなると、受益者の財産として遺産分割協議や遺言の対象財産になります。