受託者が死亡した場合、信託はどうなりますか?
受託者の死亡が問題になるのは、受託者が個人の場合です。
受託者が法人の場合には死亡による相続等の問題はすぐには顕在化しません。
そして、個人が受託者となっている場合に、当該受託者が死亡した場合、その受託者の任務は終了します。
ちなみに、受託者の地位は相続されません。
信託行為において、第二受託者(新受託者)が定められていた場合には、その定められた第二受託者が就任を承諾すれば、その第二受託者が新たな受託者として信託事務を行います。
しかし、受託者が死亡した後、新たな受託者がいない状態が一年間続くと信託は終了してしまいます。
また、受託者の死亡自体は信託の終了事由ではありませんが、信託行為に「受託者が死亡した場合には信託は終了する」旨の定めがされていた場合には信託は終了することになります。
死亡した受託者の相続人等の義務
受託者が死亡した場合、受託者としての地位は相続されませんが、信託事務が停滞することになるので、当該受託者の相続人等(法定代理人含む)は、次のことをしなければいけません。
① 信託行為に別段の定めがある場合を除き、受託者が死亡し任務が終了した旨を受益者(知れている受益者だけでOK)に通知すること。
② 新たな受託者が信託事務の処理をすることができるまで、信託財産を保管し、かつ、信託事務の引継ぎに必要な行為をすること。
上記①の通知を怠った場合や、不正の通知をした場合には、刑を科せられる場合を除き、100万円以下の過料に処せられるとされています(信託法270条①)。
受益者の差止請求
上記②の場合に、死亡した受託者の相続人等が信託財産を処分しようとするときは、受益者は当該処分をやめることを請求することができます。