単独受益者権とはどのような権利ですか?

民事信託・家族信託において、受益者は「受益権」を有する者とされています。(「受益権と受益債権の違いはなんですか?」をご参照ください。)

そして、受益者の有する権利には、信託行為の定めにより制限可能なものと、制限できないものとがあります。
受益者が複数選任されている場合、受益者の権利は全員一致の意思決定により行うのが原則です。(信託行為により、受益者集会において多数決で決する旨の定めも可能。)

一方で、信託行為の定めにより制限できない権利は、受益者が複数存在するときも、多数決等によって意思決定する必要はなく、個々の受益者が単独で行使できるとされています。

そして、そのような権利は、受益者が単独で行使できる権利ということで「単独受益者権」と呼ばれています。

 

単独受益者権は、大きく分けて次の4つに分類することができます。

① 権利行使の前提として自らの地位に関係する情報を取得する権利
② 信託目的の達成のために信託事務処理を進めるための権利
③ 受託者などの事務執行を監視し、自己の利益を守る権利
④ 自己固有の利益を守るための権利

 

具体的には次の権利です。

 

① 裁判所による申立権

② 遺言信託における信託の引き受けの催告権(信託法51項)

③ 信託財産に属する財産に対する強制執行等・滞納処分に対する異議申立て権(信託法235項、6項)

④ 異議訴訟に要した費用を信託財産から支弁するように請求する権利(信託法24条1項)

⑤ 受託者の権限行使違反の取消権(信託法271項、2項)

⑥ 受託者の利益相反行為の取消権(信託法316項、7項)

⑦ 信託事務の処理状況についての報告請求権(信託法36条)

信託事務に関する帳簿等についての閲覧・謄写請求権(信託法381項、6項)

⑨ 受託者の任務についての損失の填補又は原状回復の請求権(信託法40条)

⑩ 受託者が法人の場合の任務についての損失の填補又は原状回復の請求権(信託法41条)

⑪ 受託者の行為の差止め請求権(信託法44条)

⑫ ⑪に係る訴訟に要した費用の支払い請求権(信託法45条)

⑬ 前受託者が新受託者が就任するまでの間にする信託財産の処分の差止め請求権(信託法595項)

⑭ 前受託者の相続人等・破産管財人がする信託財産に属する財産の処分の差止め請求権(信託法603項及び5項)

⑮ ⑬及び⑭の請求に係る訴訟について要した費用の支払い請求権(信託法611項)

⑯ 新受託者として指定された者に対する就任するかどうかの催告権(信託法622項)

⑰ 受益権を放棄する権利(信託法991項)

⑱ 次の場合に受託者に対する受益権取得請求権(信託法1031項、2項)

・信託の目的の変更
・受益権の譲渡制限の定めの設定
・受託者の義務の全部一部の減免
・受益債権の内容の変更
・信託行為において定めた事項
・信託の併合・分割がされた場合に損害を受けるとき

⑲ 信託監督人として指定された者に対する就任するかどうかの催告権(信託法1312項)

⑳ 受益者代理人として指定された者に対する就任するかどうかの催告権(信託法1382項)

㉑ 受益権原簿記載事項を記した書面の交付又は提供の請求権(信託法1871項)

㉒ 受益権原簿の閲覧又は謄写の請求権(信託法1902項)

㉓ 受益権原簿記載事項の受益権原簿への記載又は記録の請求権(信託法1981項)

㉔ 限定責任信託において受託者が給付可能額を超える給付を受益者にした場合の金銭のてん補又は支払いの請求権(信託法2261項)

㉕ 受託者が受益者に対してした給付において欠損が生じた場合の金銭のてん補又は支払いの請求権(信託法2281項)

㉖ 会計監査人の任務懈怠による生じた損失の填補の請求権(信託法2541項)

 

 

 

 

参照条文◆
信託法92条他

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