信託財産責任負担債務とは?

託財産責任負担債務とは、「受託者が信託財産に属する財産をもって履行する責任を負う債務」(信託法2条9項)をいいます。
体的には下記記載の債権に対する債務とされています。(信託法21条1項1号~9号)

委託者の有する財産を信託に組み入れると、それ以降、当該財産は信託財産として受託者に帰属します。
(例えば、不動産を信託財産に組み入れることによって信託登記を申請すると、所有者欄には「受託者 〇〇〇〇」として登記されます。)

しかし、それは受託者が信託財産を管理・処分するために形式的に受託者の所有になっているにすぎません。信託財産は受益者のために管理・処分されるものなので、信託財産の経済的な価値は受益者のものです。

 

信託をすることで受託者は「信託財産」「(受託者)固有の財産」の2つの財産を持つことになります。

上述したように信託財産は実質的には受益者のために存在する財産なので、受託者が個人的に負っている債務の債権者が、信託財産は受託者に帰属しているからと言って信託財産に属する財産に対して強制執行等をすることはできません。
そういった受託者の信託とは関係ない債務は受託者の固有財産から弁済をしなければいけません。
 

一方、受託者が信託事務を執行する中で負った信託財産責任負担債務は、信託財産に属する財産をもって弁済を履行する必要がありますが、当該債務は同時に受託者の債務でもあるので、受託者は一旦固有財産から弁済をしたのち、信託財産から償還を受けることもできます。

つまり、信託財産責任負担債務の債権者は、信託財産のみならず受託者固有の財産に対しても債務の履行を求めることができます(信託法21条2項による例外あり。)。

 

ここまで長々と書いてしまいましたが、次のようにイメージしておけばいいでしょう。

 

受託者が信託とは無関係に負担した個人的な債務

→ 受託者の固有財産から弁済

 

信託財産責任負担債務

→ 信託財産に属する財産から弁済

     or

  受託者の固有財産から弁済して、信託財産から償還を受ける(信託法
  
21条2項よる例外あり。)

 

 

 

 

【信託法21条1項】

掲げる権利に係る債務は、信託財産責任負担債務となる。

①受益債権

②信託財産に属する財産について信託前の原因によって生じた権利

③信託前に生じた委託者に対する債権であって、当該債権に係る債務を信託財産責任負担債務とする旨の信託行為の定めがあるもの

④信託の変更等がなされる場合の受益権取得請求権

⑤信託財産のためにした行為であって受託者の権限に属するものによって生じた権利

⑥信託財産のためにした行為であって受託者の権限に属しない行為によって生じた権利

⑦利益相反行為の制限にかかわる行為等によって生じた権利

⑧受託者が信託事務を処理するについてした不法行為によって生じた権利

⑨信託事務の処理について生じた権利

 

 

【信託法21条2項】

信託財産責任負担債務のうち次に掲げる権利に係る債務について、受託者は、信託財産に属する財産のみをもってその履行の責任を負う。

①受益債権

②信託行為に限定責任信託の定めがあり、かつ、登記がされた場合における信託債権

③法律上信託財産に属する財産のみをもってその履行の責任を負うものとされる場合における信託債権

④信託債権者との間で信託財産に属する財産のみをもってその履行の責任を負う旨の合意がある場合における信託債権

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