受託者が判断能力の低下(認知症等)や病気になった場合、信託はどうなりますか?
信託法では、受託者の任務終了事由として次のように定められています。
(受託者の任務の終了事由)
信託法第56条 一部抜粋
・受託者である個人が後見開始又は保佐開始の審判を受けた場合
・受託者が辞任した場合
・受託者が解任された場合
・信託行為において定めた事由が生じた場合
信託事務を行う受託者の判断能力が低下(認知症等)し、後見開始の審判を受けた場合は、受託者の任務は終了します。
受託者は家族信託において重要な役目を負っています。
基本的には、信託目的に従い受託者の裁量で信託財産の管理や処分をするわけですから、受託者は正常な判断能力・意思能力を有していなければ務まりません。
なお、受託者の判断能力が低下(認知症等)した場合やその他の病気に罹患した場合に、まだ後見開始または保佐開始の審判がなされていない場合には、受託者の任務は終了しません。
しかし、それでは信託事務を正常に行うことができず、信託事務の停滞を招いてしまうので、受託者が自ら辞任することや、受託者を解任させること、または信託行為において受託者のそのような事態を想定した規定をあらかじめ設けておく必要があります。
後継の受託者がいないと信託は終了する!?
受託者の任務が上記のような理由で終了した場合、信託を続けるには次の後継受託者が必要になります。
信託行為においてあらかじめ後継受託者が誰になるかを定めることもできますし、後継受託者の指定方法を定めておくこともできます。
また、利害関係人の申立てにより裁判所が後継受託者を選任することもできます。
しかし、信託行為によって指定していた受託者がその就任を拒否した場合や、事後的に受託者がなかなか選任できない場合など、受託者が存在しない状態が1年間続くと信託は強制終了してしまいます。
(信託の終了事由)
信託法第163条 一部抜粋
三、受託者が欠けた場合であって、新受託者が就任しない状態が1年間継続したとき
なので、家族信託では、もしすでに後継受託者の候補者がいるのであれば、信託設定時においてその旨定めて置き、その者に説明をして事前の了解を取っておくことがベターかと思います。
しかし、後継受託者が見つからない場合もあると思いますので、そのような場合には、受託者を法人(一般社団法人等)にする等の対応策も検討してもいいかもしれません。