受託者には報酬を支払う必要がありますか?
民事信託・家族信託における受託者は、次の場合を除き、基本的に無報酬で信託事務を行うことになります。
① 信託財産から報酬を受けることができる旨の定めがある場合
② 信託の引き受けについて商法512条(※)の適用がある場合
③ 受益者との合意により、受益者から報酬を受け取る場合
つまり、受託者が専門職など商法の適用がある場合を除き、報酬に関する定めがない場合には、受託者は報酬を受け取ることができませんが、受益者との合意によって受益者から報酬を受け取ることができます。
家族信託では、息子や娘が受託者に就任することが多いため無報酬とするケースも散見されますが、信託はその期間が長いので、それに伴う受託者の負担は決して軽いものではありません。
そういった中で、いかに息子・娘が受託者であろうと、信託事務遂行に対する報酬を支払うことを検討してもいいのではないかと思います。
※ 商法512条
商人がその営業の範囲内において他人のために行為をしたときは、相当な報酬を請求することができる。
受託者の報酬額
信託報酬の額は信託行為で自由に定めることができますが、具体的な額を定めていない場合は相当の額(※2)とされています。
具体的にいくらに設定するかは、当事者の経済状況等を考慮した上で決めることになりますが、成年後見における後見人や後見監督人の報酬基準(月1万~6万円)を参考にすることもいいかもしれません。
また、信託財産に収益物件(賃貸不動産)がある場合には、その毎月の家賃収入から一定の割合を受託者への報酬として支払うことも考えられます。
この場合には、受託者が賃貸物件を管理するわけですから、本来であれば不動産管理会社に支払うはずだった管理委託手数料を受託者に支払う、という考え方もできるかと思います。
※2 受託者は、受益者に対し、報酬の額及びその算定の根拠を通知する必要があります。