信託事務処理代行者とは何ですか?

民事信託・家族信託において、受託者に就任するのは通常一般の方です。

信託制度は受託者の信頼を基礎とする財産管理制度であるため、家族信託における受託者の存在意義は非常に大きなものと言えます。

しかしながら、信託事務遂行には専門的知識を有することも多くあり、また、複雑化した現代社会において信託事務を受託者一人で全て処理するということは現実的ではありません。

そこで、次のいずれかに該当する場合には、信託事務の処理を第三者(信託事務処理代行者)委託することができるとされています。

信託行為に信託事務の処理を第三者に委託する旨又は委託することができる旨の定めがあるとき。

信託行為に信託事務の処理の第三者への委託に関する定めがない場合において、信託事務の処理を第三者に委託することが信託の目的に照らして相当であると認められるとき。

信託行為に信託事務の処理を第三者に委託してはならない旨の定めがある場合において、信託事務の処理を第三者に委託することにつき信託の目的に照らしてやむを得ない事由があると認められるとき。

 

信託事務処理代行者の適格性

信託事務を委託する第三者の条件としては、次の2点が挙げられます。

・信託の目的に照らして適切な者
受託者が監督できる者

 但し、次の場合に信託事務を委託された第三者は、この2つの条件を満たす必要はありません。

・信託行為において指名された第三者
・信託行為において受託者が委託者又は受益者の指名に従い信託事務の処理を第三者に委託する旨の定めがある場合において、当該定めに従い指名された第三者


なお、受託者は、当該第三者が不適任若しくは不誠実であること又は当該第三者による事務の処理が不適切であることを知ったときは、その旨の受益者に対する通知、当該第三者への委託の解除その他の必要な措置をとらなければならない(信託行為によって別段の定め可能)とされており、また、受託者は善管注意義務を負っていることからも、上記2つの条件を無視することは健全な信託とは言えないでしょう。

また、信託事務処理代行者を選任する際の「信託事務処理を第三者に委託することが信託の目的に照らして相当であると認められるとき」とは、受託者が自ら行うよりも他人に託した方が費用や時間などの点で合理的である場合(※)や、社会通念上、受託者の本来的事務ではなく、受託者によって処理することが期待されていない場合(※2)などが想定されています。

 

信託財産の運用状況に関する報告書を受益者に送付する場合に、当該送付を運送業者に委託する場合など。

2 土地信託においてビル建設を行うために建設業者に委託する場合や、当該ビルテナントの募集広告を広告代理店に委託する場合など。

 

誰を信託事務処理代行者に選任するか。

法務的な部分に関しては弁護士や司法書士などの専門家に委託することや、信託不動産の管理については不動産管理会社、税務書類の作成や税務署への提出書類作成に関する信託事務については税理士に委託する、などのケースが見られます。

また、介護・医療に関する事務処理が必要な場合は、社会福祉士などの専門家も委託先として考えられます。

なお、信託事務処理代行者に支払う報酬も考慮しながら、誰を選任するかを考えなければいけません。
当該者に対して報酬を支払った場合、信託財産がどれほど残るのか。
潤沢な信託財産があれば別ですが、そうでない場合には事務処理を委託する前にしっかりと計算する必要があります。

その結果、能力の高い専門家以外の者を委託先の選択肢として考えることも必要になるでしょう。

 

 

 

◆参考条文◆
信託法28条、35

  1. 信託財産責任負担債務ってなんですか?
  2. 信託契約書は公正証書で作成しなければいけませんか?
  3. 受託者として信託事務を遂行する自信がないのですが・・・?
  4. 受益者連続型信託の期間は無制限にできますか?
  5. 信託管理人ってなんですか?
  6. 信託監督人ってなんですか?
  7. 受益者代理人ってなんですか?
  8. 単独受益者権とはどのような権利ですか?
  9. 受益権と受益債権の違いは何ですか?
  10. 残余財産受益者と帰属権利者の違いは何ですか?
  11. 受益者として指定された者の承諾は必要?
  12. 受託者に司法書士等の専門職が就任することは可能ですか?
  13. 預貯金を信託財産として信託できますか?
  14. 信託事務処理代行者とは何ですか?
  15. 家族信託を利用した場合、遺留分対策はしなくてもいいですか?
  16. 家族信託における倒産隔離機能とは?
  17. 委託者の年金を信託財産として設定できますか?
  18. 詐害信託とはどのような信託ですか?
  19. 家族信託と遺言はどっちが優先する?
  20. 信託財産に現金を入れる必要はある?
  21. 受託者には報酬を支払う必要がありますか?
  22. 家族信託にかかる税金(課税関係)について教えてください。
  23. 信託契約と遺言信託はどのように使い分ければいいですか?
  24. 未成年者は受託者に就任できる?
  25. 家族信託をした場合、税務署への届出は必要ですか?
  26. 遺言信託の受託者は、自分が受託者であることをどうやって知りますか?
  27. 将来取得する予定の財産を信託財産にすることはできますか?
  28. 指図権者とは何ですか?
  29. 家族信託はいつどんな時に終了しますか?
  30. 信託事務を行う受託者が暴走した場合、どうすればいいですか?
  31. 信託銀行の遺言信託と家族信託における遺言信託の違い
  32. 受託者は信託監督人や受益者代理人になれますか?
  33. 受益者複数の場合の税務(贈与税)について教えてください。
  34. 民事信託(家族信託)と商事信託はどっちを利用すればいいですか?
  35. 委託者が破産する前に、家族信託の倒産隔離機能を利用すれば財産は守れますか?
  36. 目的信託とはどのような信託ですか?
  37. 信託財産は遺産分割協議や遺言書の対象財産となりますか?
  38. 認知症になってからでも家族信託は利用できますか?
  39. 信託開始後、受益者を変更することはできますか?
  40. 未成年者や認知症で判断能力のない者でも受益者になれますか?
  41. 受益者にとって不利な信託の変更等が行われた場合、受益者として対抗する方法はありますか?
  42. 受託者が死亡した場合、信託はどうなりますか?
  43. 委託者が死亡した場合、委託者の地位は相続されますか?
  44. 受託者が借り入れをした債務は、債務控除できますか?
  45. 受託者が判断能力の低下(認知症等)や病気になった場合、信託はどうなりますか?
  46. 家族信託(民事信託)では、全ての財産を信託しなければいけないですか?
  47. 受託者を法人にするメリットは何ですか?
  48. 一般社団法人と株式会社はどちらが受託者に適していますか?
  49. 資産家やお金持ちじゃないと家族信託は利用できないですか?
  50. 遺言代用信託とは?
  51. 家族信託(民事信託)を利用すれば、後見制度を利用する必要はないですか?
  52. 受託者は委託者の代わりに遺産分割協議に参加できますか?
  53. 家族信託(民事信託)をして財産が受託者名義になった場合、受託者に贈与税や不動産取得税はかかりますか?
  54. 受託者が死亡した場合、なにをすればいいですか?
  55. 受託者を2人選任することはできますか?
  56. 家族信託の受託者が死亡した場合、受託者の地位は相続されますか?
  57. 家族信託における受益者代理人はどのような場合に定めておくといいですか?

お気軽にご相談ください

会社のこと、不動産のこと、相続・遺言のこと、家族信託のこと、その他お悩みのこと。

完全予約制

お電話でのご予約受付:042-850-9737(平日9:30~20:00)

メールでのご予約・お問合せ(24時間受付中)

土日祝日相談、早朝・夜間相談、当日相談、出張相談

無料メール法律相談24時間受付中!

メールでの無料法律相談!お気軽にご利用ください。