相続人が存在しない場合、相続財産はどうなりますか?

親や兄弟も死亡している、独身で配偶者も子供もいない、相続人が全員相続放棄している、相続人が相続欠格に該当するなど、様々な理由で相続人がいない状況の方もいらっしゃいます。

れを「相続人不存在」と言いますが、このような相続人がいない場合(相続人のあることが明らかでない場合)には故人の相続財産はどうなるのでしょうか?

この場合には、相続財産はまず「法人」として扱われることになります。
そして、家庭裁判所に「相続財産清算人選任の申立て」をすることにより、相続財産清算人が選任されます。
そして、その後13ヶ月の期間をかけて、債権者・相続人・特別縁故者を探し、それらが見つからない場合や処分されずに余った相続財産は最終的に国庫に帰属します。

なので、相続人はいなくても、お世話になった人に財産をあげたい親戚に相続財産を遺したい法人等に寄付したい、というように相続させたい人や会社等がある場合には、遺言書を遺すことでその想いを実現できるかもしれません。
相続人がいない場合には、ぜひ遺言書作成の検討をしてみてはいかがでしょうか?


なお、相続人の生死が不明な場合や、相続人が行方不明の場合は相続人不存在には該当しません。
また、相続人は存在しないが相続財産全部の包括受遺者が存在する場合にも、相続人不存在には当たらないとされています。

 

相続財産清算人選任の申立て

申立人

・利害関係人(被相続人の債権者,特定遺贈を受けた者,特別縁故者など)
・検察官

申立て先

被相続人の最後の住所地の家庭裁判所

申立て費用

・収入印紙800
・郵便切手及び官報公告手数料

申立て書類

・被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

・被相続人の父母の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

・被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している方がいらっしゃる場合,その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

・被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

・被相続人の兄弟姉妹で死亡している方がいらっしゃる場合,その兄弟姉妹の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

・代襲者としてのおいめいで死亡している方がいらっしゃる場合,そのおい又はめいの死亡の記載がある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本

・被相続人の住民票除票又は戸籍附票

・財産を証する資料(不動産登記事項証明書(未登記の場合は固定資産評価証明書),預貯金及び有価証券の残高が分かる書類(通帳写し,残高証明書等)等)

・利害関係人からの申立ての場合,利害関係を証する資料(戸籍謄本(全部事項証明書),金銭消費貸借契約書写し等)

・財産管理人の候補者がある場合にはその住民票又は戸籍附票

申立て後の流れ

 

民法改正により、①(選任公告)と④(相続人捜索公告)を同時に行うことができるようになったため、約10か月かかっていた手続きが約6か月に短縮されました。(2023.8.2追記)

 

①【相続財産清算人の選任】

相続財産清算人選任の申立てがあった場合、家庭裁判所は相続財産清算人を選任します。

この相続財産清算人は、被相続人との関係や利害関係の有無などを考慮して,相続財産を管理するのに最も適任と認められる人を選ぶとされています。司法書士等の専門職が選ばれることもあります。

↓遅滞なく

②【公告(1回目)】相続財産清算人選任の公告

①で相続財産清算人を選任した場合、家庭裁判所はその旨を公告します。

 

2か月後

 

③【公告(2回目)】債権者及び受遺者へ債権申出の公告

②の公告をしてから2か月が経過しても相続人が明らかにならない場合には、相続財産清算人は、相続債権者(被相続人にお金を貸していた人など)及び受遺者(遺言書によって財産を受け取るとされている人)に対し、相当の期間内(2か月以上)に債権の申出をすべき旨を公告します。

 

2か月以上

 

④【公告(3回目)】相続人捜索の公告

③の公告から定めた期間(2か月以上)が経過しても、なお相続人が見つからない場合、相続財産清算人又は検察官は家庭裁判所に対し「相続人がいたら申し出るように」という旨の公告をするよう申し立てます。

 

6か月以上

 

⑤【相続人不存在の確定】

④の公告の期間が終わってもなお相続人が見つからない場合、相続人不存在が確定します。

 

3か月以内

 

⑥【特別縁故者の申出】

⑤の相続人捜索の公告の期間満了日から3か月以内に、特別縁故者(被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者、被相続人と特別の縁故があった者)は家庭裁判所に、相続財産の分与を請求(相続財産を分けるように請求)することができます。

家庭裁判所はこれを相当と認めるときは、相続財産の全部又は一部を特別縁故者に与えることができます。

 

 

⑦【国庫への帰属】

⑥によっても処分されなかった相続財産は国庫に引き継いで手続き終了です。

 

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